水中のガンマン テッポウウオ


テッポウウオは、東南アジアからオーストラリア北部にかけて生息する
体長15cmほどのスズキ目テッポウウオ科の魚。
取材があったのは、赤道付近のパラオ共和国
400種ものサンゴが生息し、マングローブが広がっている。
300を超える石灰岩からなる島々は、太古からサンゴが豊富だったことをうかがわせる。


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水鉄砲のように口から水を発射するわけだが、
人間が噴き出すように唇を絞って射出しているわけではなく、
喉の溝と舌の突起を使って水を絞っている。


また、圧力が抜けないようにえらぶたを閉じ、
水流の勢いを殺さないよう口をわずかに水面から出して打ち出すことで、
なんと秒速10m近い初速を達成している。*1



命中精度もかなり高い。
照準を合わせやすくするため、
光の屈折の影響を受けないように獲物の真下に位置をとり、
最も視認性が優れる体の軸から30度上方に獲物をとらえ、水を撃つ。

獲物の大きさによって噴き出す水の量をコントロールするうえ、
しぶとくしがみつく虫には連射で対応。10連射以上も可能。

獲物の落下地点を予測し、ダイレクトキャッチすることも。
獲物が近いときは、ジャンプして直接捕食することもある。


テッポウウオの成魚は、干潮になると沖に出ないといけないが、
潮が干潮から満ちていくとき、それまで地面近くにいた虫が
塩の満ちに合わせてマングローブを登っていく。
このとき、一時的に水面付近に虫が多くなっているため、
テッポウウオにとっては稼ぎ時。


稚魚は潮が引いてもマングローブに残れるため、
成魚がいるときは横取りされてしまう獲物を
射撃が下手でも獲物を捕れる可能性が高まる。
ただ、せっかく撃ち落としても、
落とした虫が怖くて食えなかったりすることもw

ハシナガチョウチョウウオテッポウウオ


1764年にオランダ人が、インドネシアから送られてきた剥製にもとづいて
ハシナガチョウチョウウオテッポウウオとして紹介したのが
テッポウウオの世界デビュー。
2年後、本物のテッポウウオの剥製が贈られてきたため、学会は混乱。
インドネシアではどちらもサムピット(吹き矢の筒)と呼ばれているために起きた悲劇。
1902年にロシア人が両方飼育し、確認するまで、
どちらがテッポウウオ(アーチャーフィッシュ)なのかは論争が絶えなかった。

*1:30cmの虫まで0.033秒で到達。1m先でも当たる。