メタノール燃料電池

携帯機器用燃料電池として、開発が進んでいるダイレクトメタノール燃料電池は、燃料として液体メタノールを使用する。このメタノールは、揮発性で*1、わりと引火、爆発しやすい*2といった性質がある。このため、締め切った部屋や、交通機関の内部などで、液体エタノールが漏れると惨事が起こりかねない。(航空機内で使用することは可能になったらしい。>燃料電池、メタノール燃料カートリッジがICAOを通過 - nikkeibp.jp - 製造)また、人体にも影響があり、代謝の過程で生じるホルムアルデヒド、蟻酸が人体に悪影響を及ぼす。体重が60kgの人だと、25gほどのメタノールを摂取すると死亡する危険がある。
このため、メタノールを扱うには、劇物毒物取扱責任者だか、危険物取扱者だかの資格が必要だし、付随して保管場所なども必要になってくる。これは、直接メタノール燃料電池の普及にとっては大きくマイナス。
これらのメタノールの危険性から生じる、次の二つの問題を解決しないと、どんなに小型で長持ちの燃料電池を開発出来ても、実用化されません*3

  1. 流通の問題
  2. 使用の問題

流通では大量に扱うため、事故が起こると大きな被害が出てしまうから、しっかり保管したいけど、ガソリンと違って必ずしも自動車に乗っていない人を相手にするから、いろんな場所で売りたい。また、使う人にとっては、出来るだけ便利に使いたいけど、安全性も確保してほしいと思うでしょう。そして、どう解決するかというのも重要です。

  • 人間にがんばってもらうか(新しい資格)
  • 品物にがんばってもらうか(新しい規格)

以上のことを踏まえて、私なりに考えてみました。

  • 資格による解決

流通の問題は、以前、自動車燃料用にメタノールが使用可能になった時のように、規制緩和で解決されると思います。「燃料電池メタノールのみ取扱いに係る特定品目毒劇物取扱資格」みたいのが出来れば、コンビニとまでは行かなくても、価格が安ければ取り扱うお店が増えるのではないでしょうか。

平成6年の法令改正により「内燃機関メタノールのみ取扱いに係る特定品目毒物劇物取扱試験」が新設され、資格取得が容易となり、これに合格した者を取扱責任者としてスタンドに配置できるようになりました。

使用者の問題は、数が多いので大変。講習を聞いて受講証明書をもらうようにするのか、試験をして「少量の燃料電池メタノール取扱資格」みたいのをもらうようにするのか。店でそれらを見せて購入。

  • 規格による解決

うまく統一規格を作ってくれれば、当然流通にも消費者にも負担は少ない。規格の策定に失敗すると、消耗品商法の割高感からいまいち普及しないかもしれません。
特定の形状をした注ぎ口をもち、IDタグ付燃料容器にしか注げない容器の規格を作ってもらう。この容器からは揮発もしないし、倒れてもこぼれない。さらに注いだ日時、量、容器の情報をネットワークで共有できる仕組みを作ってもらえればいいかなと。週や月単位で補給できる量の上限を決めておけば、犯罪に使用されるリスク*4をある程度回避できるし。あるいは燃料カートリッジを乾電池のような形で販売するか。(これは、楽ちんだけど、デザインの制限が生じるし、乾電池に対して抱く、中途半端な残量に対する悩みが解決されない。)

実際には、資格も規格も組み合わせて、解決されると思いますが、技術の進歩に影響を与えにくく、かつ、出来るだけ便利に解決してほしいですね。

*1:沸点が65℃、各温度における蒸気圧はそれぞれ、11℃−約60mmHg、20℃−約100mmHg、40℃−約260mmHg。比重は20℃で0.7915。

*2:引火点11℃、爆発範囲6.7〜36.5%

*3:すべての製品にMSDSがついたりとか

*4:火薬をほぐす人はどうしてもいるから、メタノールを使った犯罪がある程度は起こるでしょう。